「恐ろしや 夜ふくろうか 人殺し」
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田舎出身の自分は、3日以上休みがあれば、地元へ帰省する。
今年(2024)のGWも帰省した。
自分は昔から、よく夜中に、灯りを片手に散歩をしていた。
お化けや暗闇などに対する免疫が出来た、高1の時からの趣味である。
その日は、0時に寝床へ着いたのだが、どうにも寝苦しく、起き出して散歩へ行くことにした。
雨上がりの田園地帯。。。
地表から立ち上がる霧は塊を成し、まるで幽霊のようにも見える。
しかし、怖いことはない。
カエルや虫が盛大に合唱し、昼間よりも賑やかだからである。
月は雲に隠れてしまっていたが、星は所々見え、非常に美しく、心地よい夜だった。
春宵一刻値千金とはよく言ったものである。
川辺を歩く……
田植えの時期ということもあり、川は濁っていて、生物は見られなかった。
農道と公道が交錯する十字路に、木が生えている。
そこから、何かが電線に飛び移った。
無音……
眼で捉えなかったら、きっと気づけなかっただろう。
10mほど離れていたため、たとえ懐中電灯を携えていても、夜目ではよく見えなかった。
しかし、フクロウと直感した。
「フクロウは、羽毛に生えた細かい毛が摩擦で生じる音を消すから、無音で飛べる」
……遠い夏、親父に教わった記憶が、復刻した。
そうでなくても、たとえ懐中電灯の光があろうと、この真夜中に「木から電線に飛び移る」という芸当をやってのける鳥は、フクロウを置いて他にはいないだろう。
生息していることは知っていた。
しかし、これまで何十回も夜の散歩をしてきたが、本物の野生のフクロウにお目にかかるのは、これが初めてだった。
近づいたら逃げられるかもしれない。
幸いにも、懐中電灯の光に対しリアクションは無かった。
自分は是非、この野生フクロウとの邂逅を記念写真に収めるべく、スマートフォンを取り出した。
その時だった。
――ヒュウウウン
実際にはそんな音はしてない。
だが、詳しい描写は要らないだろう。
フクロウがこちらに飛び掛かって来たのである。
「ウアアアアッ!」
恐怖に叫んだ・悲鳴を上げたというよりかは、驚愕が漏れたような声が出た。
幸いにも、民家の立ち並ぶ場所からは離れているため、その声を誰かに聞かれることはなかったが、もし住宅地の中だったなら、警察に通報されていたかもしれない。
フクロウは、自分の頭上2mほどを滑空し、闇に消えた。
写真に収めることは叶わなかったが、脳裏には焼き付いた。
フクロウと目が合い、そして鍵爪、引いては狩猟本能が、明らかに自分と言う生物に向けられているのを、これまた本能的に感じ取った。
彼らの視覚なら、自分の姿は手に取るように分かるはずである。
相手を人間と見知ってなお、襲い掛かって来た。
推察するに、あの木には巣があるのだろう。
あれは、巣に接近してきた人間に対する、威嚇の行動だったと思う。
はっきり言って、トラウマになった。
写真には残せなかったから、俳句にする。
「恐ろしや 夜ふくろうか 人殺し」
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〇更新記録
・2024年6月28日 記載
・2024年10月8日 更新
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